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あとがき(抜粋)
本書は、拙訳「マシュー・アーノルド詩集---二つの世界の間に」(1990年)の文字どおり続編である。先の翻訳で彼の代表作をほぼ網羅したつもりであったが,その後ぜひ訳出してみたいと思う彼の詩がほかに二十数篇あり、この度それを訳詩集として公にすることとした。それぞれ、まとまった作品としては本邦初訳のものが多いかと思う。
アーノルドは若いころ、相当なダンディーぶりを発揮したことはよく知られているが、内面の詩的意識はつねに人間の行き方全体に関わっていたと思われる。十九世紀英国の典型的なヒューマニストであった彼は、近代という分裂の時代に生まれ合わせ、古典的叡智と、イギリス詩の伝統感覚と、世界人的批評意識を以って、この時代を生きぬいていった。この訳詩集を編んで、彼の宗教性と言おうか、その信仰の空洞化が、云々されるにも拘らず、神(運命)・自然・人の関係を想う魅力ある特有な詩的美意識とその雰囲気を、つよく感じざるをえない。従って翻訳の努力もまた、それを能うかぎり忠実に日本語で表現することにあった。
(以下省略) |
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