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第2言語クラスルーム研究

by Craig Chaudron 田中春美・吉岡薫共訳
A5判,並製,316頁                 
定価:本体2,000円+税
初版発行日:2002.4.1 

ISBN4-89798-622-2

本書は,教師と学習者の授業に際しての行動と,教師=学習者間の交流活動についての,無数の研究の成果を要約し,そのような行動が,言語学習にどのような影響を与えるかを考察したもの.また,教師ことば・誤りの訂正・授業中の談話に関して,著者自身の仕事から引き出された結論も含まれている.原著は,ケンブリッジ応用言語学叢書,Second Language Classrooms: Research on Teaching and Learning.

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             日本語訳への序文

 私は、1988年の拙著Second Language Classrooms: Reserch on Teaching and Learning (略称 SLC) の日本語訳へのこの短い序文を書くことを依頼され、嬉しく思っている。そのわけは、このように立派な仕事をしてくれた、田中春美教授と吉岡薫氏と長年にわたって接触できたことを、大変名誉に思うだけでなく、私の著書がずっと多くの読者層に利用していただける機会を与えられたことを、光栄に思うからである。
 
 しかしながら、この序文を用意しているときに、もとの英語版が基づいていた基礎研究が行われてから、長い年月が経ってしまったことに気づき、心に痛みを感じている。
下書き・編集・出版の段取りに従って、1988年初めに出版されたSLC では、だいたい、1986年の夏頃に出版されたか、ほどなく出版される形になった研究までが扱われており、ということは、基の研究はおそらく1985年までに行われたことになろう。こうして、この第2言語のクラスルーム研究の再検討の新版には、今なら含めることも可能な、少なくとも15年間の研究がすっぽり抜け落ちてしまっているのである。その結果、数多くの研究題目や知見のために、第2言語指導と学習に関する私たちの全体的展望が、劇的に変わってしまったのではないかと、考えられるかもしれない。
 
 しかし、大変驚いたことには、過去10年間にわたって本書をテキストとして使ってみて、私も何人かの同僚も、SLCで概観した基本的問題点、方法論上の取り組み方、知見の主なまとめが、今でも思った以上にしっかりしたものである、ということが分かった。これは、何も新しいことが発見されてきていないとか、私たちの授業過程の見方に新しい焦点や精密化が生じてきていないなどと、言っているのではない。ただ、主な研究題目は、それほど変わってきていないのである。(中略)

 15年前の私の仕事が、世界中の数多くの研究者たちや学生諸君に影響を与えた、といことを知ったばかりでなく、クラスルーム研究の分野で仕事をしている同僚たちが、これまでに達成してきた素晴らしい業績によって、私自身の知識が挑戦を受け、さらに視野が広げられたのは、私にとってとても刺激的な経験であった。そして、何よりも励ましとなったのは、これらすべての業績で、クラスルーム研究の主要な目標について基本的合意ができてきたことである。私はそれを、Chaudron (2000 a : 1713頁)で、次のように表明した。

   「・・・・・・どのように、学習者たちの第2言語の能力を向上させ、彼らが
  閉 じ られた教育環境から抜け出し、今日のひどく複雑で過酷な要求を
  する世界で、他言語使用が可能な市民として貢献できるようにする、もっ
  とも効果的だがもっとも思いやりのある方法を実行に移すかについて、私
  たちの理解を高める〔こと〕・・・・・・」

 というわけで、(吉岡)薫さんと田中教授に、仕上げてくれた訳書に対して、心から私の感謝と賞賛を捧げたい。また、SLCの出版から今日まで、そこで扱われた諸問題を私たちすべてにとっていかに重要なものであるかを、長年にわたって私に確信を持たせてくれた妻のルシアと子供たち(カミラ、カーラ、ニコラス)に、特に愛と感謝のことばを表明しなければならない。


                               クレイグ・ショードロン
 
                
                  目  次

表と図のリスト
叢書編集者の序文
著者序文
日本語訳への序文〔英文と訳〕


1.第2言語クラスルーム研究の主な問題点 
 第2言語指導の価値
 第2言語指導の状況
 主な問題点
   授業指導からの学習
   教師ことば
   学習者の行動
   教室内での交流活動
 方法論上の問題
 本書のあらまし

2.クラスルーム研究の方法
 研究における4つの伝統
 一般的な方法論上の問題点
   数量的および質的取り組み方
   授業観察と計測手段
   分析の次元
   研究用計測手段の信頼性と妥当性
 4つの伝統の位置づけ
   心理測定法的取り組み方
   交流分析の取り組み方
   談話分析の取り組み方
   民族誌学的取り組み方
 結 論

3.第2言語の授業中の教師ことば
 教師ことばの量と種類
   教師ことばの持つ機能の分布
 教師ことばに見られる調整
   話す速度・韻律的特徴・音形の調整
   語彙の調整
   統語法の調整
   調整のまとめ
 教師の談話の詳細な記述
   説明
 結 論

4.第2言語の授業中の学習者行動
 言語産出
   学習者の発話産出と場の要因
   まとめ
 入力生成
   年令と発話先導
   社会的状況と発話先導の機能
   文化的要因と発話先導
   まとめ
 学習者間の交流活動
   教室内の構成
   課題の種類
   まとめ
 学習者のストラテジー
   まとめ
 結 論
   
5.第2言語授業中の教師と学習者の交流活動
 学習者たちに対する教師ことばの配分のばらつき
 言語の選択
   言語選択の機能配分
   まとめ
 質問行動 
   質問の種類
   質問の調整
   質問行動のパターン
   交流活動での質問
   まとめ
 フィードバック
   学習理論の要因としてのフィードバック
   まとめ
 結 論

6.学習成果
 教師の入力と学習者の理解/産出
    話す速度
    統語上の複雑さと反復
    入力の頻度
    まとめ
 教室での言語指導
    言語指導への焦点化
    明示的文法指導
    まとめ
 学習者の行動と学習成果
   学習者の産出
   学習者の発話先導と交流活動
   学習ストラテジー
   まとめ
 授業中の交流活動と学習成果
   学習者に向けてのことば
   入力の言語
   質問と学習者の産出
   フィードバックと学習成果
   まとめ
 結 論
 
7.研究と教授の指針
 方法論上の問題点
   観察手段
   構想
   統計と報告
   理論と第2言語の授業
 研究と授業への含意
   予想にかかわる変化要因
   状況にかかわる変化要因
   過程にかかわる変化要因
 第2言語指導の価値

参考書目
訳者あとがき
索引
    
 
                    訳者略歴

田中春美 
(たなか はるみ)
1952年 立教大学英米文学科卒業
1954年 東京教育大学言語学科卒業
1956年 東京教育大学大学院修士課程英文学専攻修了(文学修士)
1971年 ブラウン大学大学院博士課程言語学専攻修了 (Ph.D.)
     南山大学名誉教授
      現在、名古屋外国語大学教授
主な著書:『言語学入門』(共著) 大修館書店、1975年
       『現代言語学辞典』(編集主幹) 成美堂、1988年ほか
主な訳書:『格文法の原理』(フィルモア著)(共訳) 三省堂、1975年 ほか


吉 岡  薫  (よしおか かおる)
1980年 上智大学外国語学部英語学科卒業
1984年 南イリノイ大学カーボンデイル校大学院修士課程言語学専攻修了      (M.A.) もと国際大学国際関係学研究科日本語プログラム教員、ナイメーヘン
(Nijmegen)大学応用言語学科日本語講師(非常勤)
     現在、IRAL(International Review of Applied Linguistics)編集助手
主な論文:「第二言語としての日本教育研究---現状と課題」
      『日本語教育』 100号(1999年3月)など、共著を含め5編 







発行所: リーベル出版(Liber Press)

  

 
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